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2023年2月15日

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人とつながり、まちとつながる!都内の会社員が甲府との二拠点居住を始めて変わったこと

二拠点居住を始めるきっかけは人それぞれ。東京都内で研修会社に勤務する武井えみりさんは、2021年に山梨県甲府市と東京都内での二拠点居住をスタート。二拠点の場所として甲府を選んだ理由や、暮らしのリアルを聞いてみた。
※こちらの特集は、2022年8月時点の取材に基づいて作成しております。

「フツーの会社員」が甲府との二拠点居住を始めた理由

武井えみりさんプロフィール

研修会社の東京オフィスで営業を担当。人との出会いから山梨に魅力を感じ、2019年より週末に山梨へ通い始める。コロナ禍でリモートワークとなったのを機に、2021年2月に山梨県甲府市へ移住。東京との二拠点居住をスタート。

山梨県甲府市と東京都内の二拠点居住をする武井えみりさん

神奈川県出身の武井さんが甲府に通い始めたのはひょんなことから。2019年春頃、甲府で開催されるトークイベントの告知をSNSで偶然見かけて興味を持ち、やってきたのが最初だった。当時、週末に弾丸であちこちを旅していた武井さんにとって、甲府はフラリと来るのに抵抗のない距離だったという。

イベント会場は甲府の老舗味噌屋・五味醤油が運営する食の体験スペース「KANENTE(カネンテ)」。そこで五味醤油6代目の五味仁さんと出会った。

「登壇者と参加者あわせて十数人くらいだったので、終わってからみんなで飲みに行って、そこでいろんな話をしたのがすごく印象に残っています。それからちょくちょくKANENTEで開催されるイベントに参加したり、山梨の方から聞いたお店に行ってみたり、五味さんからもお友だちとの集まりにゆるく誘ってもらったりして、知り合いやお気に入りのお店が徐々に増えていきました。地域の人とのつながりが増えて、どんどんまちとつながっていく感覚が、新鮮で楽しかったですね。東京に比べてお店の人にも話しかけやすい雰囲気で、混み合っていない時間ならゆっくり会話できるから、また来ようと思える関係性を築きやすく、気がついたら毎週のように甲府へ通うようになっていました」

明治元年創業の「五味醤油」。現在は昔ながらの製法で味噌のみを醸造

しかし研修会社の営業職という仕事柄、基本的に毎日東京のオフィスやお客さん先に行っていたため、山梨で暮らすことは物理的に不可能だった。それがコロナ禍で状況が一変。研修も商談もオンラインへと移行し、一時期はフルリモートでも働いたことから、「東京でなくても(山梨でも)働けるかも」と思うように。ちょうど都内で住んでいたアパートが更新時期をむかえたため、更新はせず、甲府のアパートと都内のシェアハウスを新規に契約。2021年2月に二拠点居住をスタートさせた。

「山梨で暮らしたいと思った大きな理由は“人”ですね。素敵だなと思う人たちがたくさんいて、自分もその人たちのようになるために、まずは近くに身を置きたいと思い、移住を決めました。例えば五味さんは、肩の力がいい具合に抜けていて、誰に対してもフラット。東京からやってきた、何でもないフツーの会社員の私にも本当によくしてくれたんですよね」

「最初はこんな若い子が甲府に移住して大丈夫かな?と内心心配でした」と五味醤油6代目五味仁さんの母、雅子さん。今では甲府の暮らしから料理まで何でも相談できる、武井さんの“甲府の母”のような存在

ただ、甲府に惹かれて足繁く通っていたものの、移住をすぐに決断できたわけではなく、最初は東京を離れる不安の方が大きかったという。

「地域になじめなかったらどうしようとか、出社の頻度が以前のように多くなったら続けられないかも、とか。なのでいきなり完全に移住するのではなくて、二拠点居住から始めようと思いました。その方が私にとってリスクが少なく、無理のないかたちだったんです。あとは移住を考え始めた頃、まずは周りのいろんな人に『移住したいんだよね』という話をしていました。それによって不安を感じている理由を自分の中で整理できたり、いま甲府で住んでいるシェアハウスを紹介してもらえたりしました。移住に興味はあるが不安、悩んでいる…という方は、まずは周りに自分の想いを話したり、実際に二拠点居住をしている人に話を聞いたりすることから始めるのもおすすめです」

武井さんが暮らすシェアハウスは愛宕山の中腹にあり、甲府盆地を一望できる

「二拠点居住や移住は、それ自体が目的というよりも、自分が心地よく暮らすための手段だと思っています。私の場合、たまたま心地よいと感じたのが甲府であり、山梨でしたけど、他のみなさんにとっても同じとは限りませんよね。なのでまず大事なのは、自分を知ること。何に幸せを感じて、どんな状態だと満たされるのか。私でいうと、敬愛する人たちの近くにいて、その人たちと過ごす時間が増えること。そこから影響を受けて、自分の在り方や行動が、自分の目指す良い方向に変わっていくことが幸せです。加えて、自然が近くて美味しいものが食べられたら最高。今はこれらがすべてそろっているので心から満ち足りていて、毎日が本当に楽しいです」

薪ストーブを備えたシェアハウスのくつろぎの共用スペースは、仕事の合間のひと休みや読書をするのにも最適

仕事も好転、リアルRPGのようなつながりが新鮮!

いざ二拠点居住を始めると、人とのつながりはそれまで以上に広がっていった。DJとしても活動するワイン醸造家、瓦屋さんが運営するカフェ、月に一度だけカフェになるまちの電気屋さん……など、これまでに出会ったことのないおもしろい人や魅力的な場所に出会い、「こんな生き方、商いの仕方もあるんだな」と刺激を受ける日々。また、おもしろい人と数珠つなぎで出会っていく様は「リアルRPG(ロールプレイングゲーム)感がある」のだという。

オープンしている時にはほぼ毎回訪れるというお気に入りのカフェ「AKITO COFFEE@Tane」

「先日も飲みに行ったとき、たまたま隣に座った人としゃべって、その方の行きつけのお店の話を聞いたら、前から気になっていたけどまだ行ったことのなかったお店で。今週末に行くというので『私もその日に行きます』と伝えて数日後に再会。今度はそのお店の常連さんたちとも仲良くなって、ホクホクした気持ちで帰りました。それが昨晩なんですけど(笑)。山梨・甲府という小さなまちの中で、お店も人もみんなあちこちでつながっている。新しい人に会っても共通の知り合いや話題が見つかって、すぐに仲良くなれることも多いですね」

現在、仕事では週に一度ほど都内のオフィスへ出社。5時半の始発の電車で甲府を出れば、8時半には水道橋のオフィスに到着できる。夜は東京のシェアハウスに泊まる日もあるが、最近は軽く飲んで、終電でその日のうちに山梨へ帰ってくることが多いという。

「いまや生活の99%が山梨。早く山梨に帰りたくなっちゃうんですよね。大好きな人がたくさんいる場所、帰りたい場所になっています」

仕事への支障はなく、むしろ営業成績は上がったとか。会社の人からは「武井さんは山梨へ拠点を移してから本当にイキイキしてるね」と言われることも多いそうだ。

AKITO COFFEE@Taneの店主・丹澤亜希斗さんと。「ここで心を込めて焙煎されたコーヒーと季節のスイーツをいただくのが幸せ。心がほどけてホッと癒されるひとときです」

「山梨でいろいろな人と出会ったことで、営業の商談でもいい感じに肩の力が抜けるようになりました。山梨で出会う人たちは、友だちと遊ぶだけでなく仕事も一緒にするなど、仕事と遊びの境目がないのがいいなと思っていて、私も“積極的公私混同”を進めようとしているところ。実際に、大好きな山梨に仕事を通して貢献したい、という想いから今期の個人目標を設定して、活動しています」

週末の夜には本業に加え、飲食店でのバイトもしている。それはお金のためではなく、まちの人たちとの“共通言語”を増やして、人とより広く深くつながりたいから。純粋に様々な人と出会い、予測していなかった未来につながっていくのが楽しいのだという。

「学生の頃や東京にいた頃は、その場にいるなるべく多くの人とつながろう、人脈を広げよう、みたいな気持ちの時もあったんですけど。ある時、山梨で敬愛する人をある人とつなぎたいと思ったときに、『まだそのタイミングじゃない』と言われたことがありました。焦ってつながらなくても、つながる人とはいずれつながる、という執着しないスタンスがいいなと。そういうローカルの時間の感覚や考え方に、私もすごく影響を受けています」

コロナ禍のリモートワークが二拠点居住を後押し。集中して仕事をしたいときはシェアハウスや甲府駅前のコワーキングスペースで

「地域を知る入り口になりたい」という想い

最近は甲府愛が高まるあまり、甲府駅周辺のお気に入りの店をまとめた「KOFU偏愛まち歩きMAP Vol.0」を作成。シェアハウスのイベントで配ったり、まちの飲食店に置かせてもらったりしている。

「二拠点といいつつ、心はもう山梨人です(笑)。自分が暮らすまで甲府には観光のイメージがなかったんですけど、魅力的な個人のお店が多く、それが外の人にあまり知られていないのがもったいないなと。「KOFU偏愛まち歩きMAP Vol.0」は飲食店をやっている知り合いに何気なく頼まれたのがきっかけで、五味さんに紹介してもらったイラストを描ける人と一緒につくりました。今は常に持ち歩いてあちこちで配ったり、仕事で山梨の会社さんを訪れた際にも渡しています。

あとは友だちから「山梨に行くよ」と連絡をもらったときは、好みや要望を聞いておすすめの情報をまとめて送ったり、予定が合えば一緒にまちを周ったり。『山梨って、こんな素敵なお店があるんだ!』と驚いてくれると嬉しくてニヤニヤしちゃいます。ただ、私もまだまだ知らないことが多いので、一緒に魅力を発見して、深堀りしていってる感じですね」

甲府駅周辺の偏愛するお店をまとめた「KOFU偏愛まち歩きMAP Vol.0」

今後はもっと深く山梨に関わっていきたいという武井さん。「たとえば今の仕事を週3~4日くらいにして、残りの日は山梨の会社で働けたらな、なんてことも考えたりします」と楽しそうに話す。

最後に、甲府で暮らす魅力をあらためて聞いてみた。

「本当に皆さんやさしくてあったかいんですよ。先日体調を崩して寝込んでいたときも、五味さんや妹の洋子さんがわざわざ山を登って家まで食料を届けに来てくれて。私にとっては当たり前じゃないやさしさを、当たり前のようにくれるので、私ももらったやさしさを周りに還していきたいと、いつも思っています。

もしかすると、山梨のみなさんがやさしくしてくれる理由のひとつに、どこの誰かわからない、赤の他人じゃないから、というのはあるかもしれないです。『ああ、○○さんの友達ね』とわかると距離感が近くなって、よくしてくれた人もいると思うんです。だから、これから山梨に入ってみたいと思う人には『えみりに聞いて来た』って私をうまく使ってほしいなと。

山梨は東京に比べてエリアも狭く、人口も少ないので、中に入ってしまえば楽しいと思います。ただ、どの入り口から入るかで見え方が全然違うと思っていて、だからこそ、どこからどうやって中に入るかが大事。私は五味さんという入り口から入って、ものすごく山梨にはまりました。今度は自分がこの地域をおもしろいと思ってくれる人を増やす入り口になれたら、と思っています」

シェアハウスでは、他の住人と交流できるのもまた楽しい

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