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2023年11月24日

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人口約500人!山梨県で一番小さい村・丹波山村に移住した3人が語る村の魅力

人口わずか519人(2023年10月1日現在)の丹波山村は、ここ10年で30・40代と9歳以下の子どもの人数が増えている。山梨県の秘境ともいえるこの地に移住者が増えているのだ。実際に移住した3人に、移住の決め手や暮らして感じる村の魅力を語ってもらった。

コロナ禍、Uターン……三者三様の移住のきっかけ

――現在の暮らしと移住の理由を教えてください。

星野允人(以下 星野):2023年春に丹波山村に移住し、ここ「TABA CAFE」でシェフをしています。東京都出身で、ずっと都内のレストランで働いていたのですが、コロナ禍で勤めていた店が閉店し、働き方や自分の料理を見つめ直したくなって。以前イベントで丹波山村のジビエの鹿肉に出合い、その味に惚れ込んでいたことや元上司がTABA CAFEとつながっていた縁から、丹波山村への移住を決めました。

古民家を改装したTABA CAFEシェフの星野允人さん

梅原颯大(以下 梅原):2022年春に丹波山村で梅鉢不動産株式会社を設立しました。所有者が不明で「利用ができていない空き家」を「利用できる空き家」に変えたり、空き家の活用による移住者の増加を目指したり、空き家問題解決に挑戦しています。
出身は静岡県伊豆の国市。大学在学中に地域課題解決を考える授業で丹波山村と関わるようになりました。コロナ禍でリモート授業になり、3年生の頃から丹波山村との二拠点居住をスタート。4年生の頃から村内の事業者さんと連携して空き家調査を実施し、卒業と同時に起業し、移住しました。

村で唯一の不動産屋さん、梅鉢不動産株式会社代表の梅原颯大さん

矢嶋澄香(以下 矢嶋):丹波山村役場の地方創生推進室で地域おこし協力隊や移住関連の業務を担当しています。丹波山村の出身で、2022年春にUターン。夫と、5歳と3歳の子どもたちと家族4人で暮らしています。
村には高校がないので、私自身は中学卒業と同時に実家を出て一人暮らしをしました。その後、東京都内へ進学、山梨県で就職、ニュージーランドでワーキングホリデーをして、そこで夫と結婚。帰国後は夫の出身地である埼玉県で長男を出産したのですが、フルタイムの仕事と育児に追われてイライラしている私を見て、夫が「丹波山に行こうか」と半ば思いつきで発言したのが移住のきっかけです。同級生に「帰ってこようと思うんだけど仕事ある?」と聞いたら、役場に人が足りないと言われて職員になりました。

丹波山村地方創生推進室の矢嶋澄香さん、二児の母

――星野さんと矢嶋さんは既婚者ですが、移住に対してご家族は?

星野:妻はまだ東京都内に住んでいて二拠点居住です。静岡県出身で、都会に住みたい気持ちが強いみたいですね。現在は東京都内のパン屋さんで働いていて、週末だけ別荘感覚で丹波山村に来て店を手伝ってくれます。以前は同じお店でシェフとサービスとして働いていたのですが、忙しいからケンカも絶えなくて。今くらいの距離感がちょうどいいのかもしれません(笑)。夫婦二人なのでできる暮らし方でもありますが、こういうのもありだなと思いますね。

矢嶋:夫も移住を機に前の会社を辞めて、現在は小学校の用務員をしています。パソコン作業の時間が減り、体を動かして仕事ができるのでストレスフリーだそう。夫は海外暮らしが長いこともあり、住む場所や仕事に対して、絶対にこれじゃなきゃイヤというこだわりがない柔軟な人。ダメならまた別の場所へ行けばいいかくらいの気持ちでいると思います。

座談会は星野さんがシェフとして厨房に立つTABA CAFEにて開催

丹波山村で働き方がどう変わった?

――縁もあったと思いますが、地方移住の選択肢はほかにもある中で、丹波山村で働こうと思った決め手はなんですか?

星野:まず、丹波山村は食がすばらしいですね。ジビエはもちろん、アユの養殖、地場野菜、舞茸など食材が豊富。あとここなら自分が望む働き方ができると思えました。東京都だと維持費を稼ぐために、やりたいこと度外視で営業しないといけない。地方は維持費が安い分、お客さんも少ないですが、今はSNSで発信もできるし、時間をかければ必ずファンをつくって地方に人を呼べるはず。好きな場所で好きな料理を出して、自分もお客さんも幸せになれたら最高ですよね。丹波山村に来て時間の余裕ができましたが、あえて労働時間は変えずに、空いた時間をメニューや店のことを考えるのに費やしています。ファンづくりにはそういう時間が大切かなと。

山梨県の北東部、東京、埼玉との境に位置する丹波山村。雲取山や飛龍山といった2,000m級の山々に囲まれ、面積の97%を山林が占める

梅原:丹波山村で起業したのは、大学の授業で関わったのが直接的なきっかけですが、500人という村の規模はビジネス的にも実績を出しやすく魅力的です。私のミッションは空き家を活用して人口を増やすことですが、5万人規模の町で100人増えてもインパクトは小さい。でも500人規模の丹波山村で50人増えたら大ニュースです。最初は家が足りないなら空き家を回せば何とかなるだろうくらいに思っていたのですが、なかなか難しいですね。でも課題解決は楽しいです。
あとは学生時代から村の人に家を貸してもらったり、夜ご飯に誘ってもらったり、本当によくしてもらったんですよ。ずっと空き家調査も一緒にやってきたので、途中で「就職するから東京に帰ります」とは言いたくなかった。最後まで取り組んで恩返しのようなことができたらという思いもありました。

「丹波山の鹿肉は、肉の味がしっかり残っていて本当においしいんです」と星野さん。村で開催した食をテーマにしたイベントでも紹介した

矢嶋:毎日バタバタ動いているので「あいつは地元をどうにかしようと思って村に帰ってきたんだ」と思う人もいるようですが、実際は完全な自己都合(笑)。ゆったりした田舎暮らしが始まると思っていたのですが、この忙しさは想定外ですね。人手不足なのもあって、田舎だと仕事でもプライベートでも、圧倒的にプレーヤーになれるんです。ヒットが打てるか空振りするかは本人次第ですが、とにかく打席が回ってくる。一人が持っている役割が大きいし、人と人とがつながりやすく、すぐに動き出せるのは丹波山村の魅力じゃないかなと思います。

「昔から祖父には『村を出て好きなことをして暮らしなさい』と言われて育ってきたので、この村で働き、子育てするとは想像もしていませんでした」と笑う矢嶋さん

実際の暮らしやすさはどれくらい?

――率直に丹波山村での暮らしはいかがですか?

梅原:大学時代からいろいろな人と関わらせていただいて感じるのは、閉鎖的ではなくオープンで、いい意味で田舎っぽくないということ。食事に誘ってくれるのもそうだし、何か聞けばすぐに教えてもくれるし、本当に助かっています。もちろん移住者の中には、周囲と一定の距離を置きたい人もいると思うんですけど、そういう人には村の人もズカズカ入り込みません。付き合いの距離感がすごくちょうどいいんです。

丹波山村は、多摩川の源流である丹波川が流れていることから東京の"水のふるさと"とも言われる

矢嶋:移住者慣れしているのかもしれませんね。丹波山村の人口は現在約500人。直近の10年で100人ほど減っているのですが、30代や40代の子育て世代、9歳以下の子どもの数が増えているんです。その二大要因が地域おこし協力隊と山村留学。卒業生やその家族も含めると人口の1割くらいが地域おこし協力隊関係者です。
500人しかいないので、関係が濃密ですよね。私自身、埼玉県にいたときより一日にすれ違う人の数はぐっと減りましたが、関わる人や話す人の数は明らかに増えました。役場にもたくさん人が来ますし、道ですれ違った人には必ず挨拶しますし、地域おこし協力隊は現在17人いるんですけど、毎日必ず誰かしらの顔を見ます。たまに一人でランチをしようとここにきても結局星野さんと話しこんだり(笑)。

「自治体と連携しやすく、結果も出しやすい丹波山村の規模は、事業を展開するうえでも魅力的」だと梅原さん

――生活の利便性はいかがでしょう?

矢嶋:コンビニも駅もないので「さぞかし不便でしょう」と言われることもありますが、慣れるとそこまで不便を感じません。買い物は週に1回、甲州市に行きますが、埼玉県にいた頃も週末にまとめ買いしていたので頻度は同じ。ネット通販もあるので、特に困りません。生活の質は高いと思います。東京都も近いし、食べ物もおいしいし。

星野:野菜の鮮度は物理的な距離に依存しますよね。東京都にいるときは農家さんから朝採れ野菜を送ってもらっていましたが、ここは生産者が隣にいる環境。今後は店でも丹波山村の食材をより積極的に使っていきたいと思っています。

星野さんがつくるある日のランチ。TABA CAFEは、地元の素材をふんだんに使い、ヴィーガンスイーツなど体に優しいメニューを取り揃えている

――子育ての観点ではどうですか?

矢嶋:通勤時間が減って子どもと過ごす時間が増え、突発的な仕事や電車遅延で保育園のお迎えに間に合うかやきもきすることもなくなりました。実家だけじゃなく、みんなで助け合って子育てしている感じがしますね。都会のように子どもの声がうるさいと言われることもなく、年配の人たちも「子どもがいることがありがたい」と思ってくれている感じ。保育所・小学校・中学校の合同の行事も多く、子どもたちは元気にのびのび育っています。先日、村民総出の体育祭があったんですけど、長男がリレーに飛び入りで参加していて。「知らない人がいないから緊張しなかった」と言っていたのですが、小さい子どもと暮らすにはいい規模感なのかもしれませんね。

地元の農産物を購入できる「道の駅たばやま」。同敷地内に村営・丹波山温泉「のめこい湯」や軽食堂、観光案内所などがある

この村だからできること、丹波山村で描ける未来

――今後、ここで実現したいことはありますか?

矢嶋:500人の人口を600人にしたいと割と本気で考えています。なぜかおもしろい人が集まりつつあって、500人しか人がいない村にDJも、ヨガの先生もいるんですよ。この渦を大きくしていきたいですね。村としても移住相談の窓口も一元化するなどサポート体制も整えていますし、子どもの保育料や医療費、インフルエンザワクチンを無料にするなど子育て支援も手厚くしています。

星野:丹波山村の観光資源である食材には、村外から人を呼べるポテンシャルがあると思います。村には宿泊施設や温泉もあるので、うちの店のディナーと合わせて楽しんでもらうのもいいなあと。食を目当てに丹波山村に人が来るようにしたいです。公共交通機関でのアクセスは課題なので、送迎やバス増便などが検討されるとありがたいですね。それに見合う集客ができるお店を目指したいと思っています。

梅原:丹波山村に移住したいという人は多いのですが、住宅の確保が課題になっています。移住希望者はいるのに、住宅が供給できない。移住希望者は、高い熱量や目標を持っている人が多いんです。そんな人たちが住む場所がないことを理由に夢を諦めなきゃいけない状況を少しでも早く解決するのが会社の目下のミッションで、今準備を進めています。

矢嶋さんが勤務する丹波山村庁舎。村のシンボルとなるカラマツ集成材の木組みの大屋根が目印

――最後に二拠点居住や・移住を考える人に一言お願いします。

星野:二拠点居住や移住って、大げさに考えなくてもできることで、必要なのは決断だけ。地方に来て収入が下がっても、その分生活コストも下がるので、そこはあまり心配しなくていいと思います。

梅原:空き家の内見と同じで現地を見ないとわからないことも多いので、まずはふらっと見に来てほしいですね。季節によっても、曜日によっても雰囲気はだいぶ違います。


矢嶋:移住相談を受けていて思うのは、本当に移住のパターンはいろいろあるということ。移住によって今抱えている問題が全部解決するわけではないし、新たな問題も出てくると思うけれど、だからこそ気負わず1回来てもらえたら。丹波山村には、星野さんのTABA CAFEをはじめ、おいしいパン屋さんや道の駅、温泉もあって、のどかな景色にも癒やされるはず。ドライブついでに、ふらっと立ち寄ってもらえたらうれしいです。

ほっと落ち着けるTABA CAFE店内。水曜日は村のお母さんの手料理を提供する村民カフェとして営業

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