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2023年5月26日

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仕事や子育てへの影響は?山梨と都内の二拠点居住のリアル

都内の会社員として働く田口孝貴さんは、2017年に家族4人で山梨県北杜市に移住。2020年には念願のマイホームを購入した。現在は北杜市を拠点に、週に1~2回東京に滞在して都内での仕事もこなす二拠点居住をしている。山梨県を選んだ理由や実際に暮らした感想を率直に語ってもらった。

※こちらの特集は、2023年3月時点の取材に基づいて作成しております。

ドライブで訪れた北杜市で「住みたい!」気持ちが高揚

田口孝貴さん プロフィール
東京都出身。都内の生命保険会社の営業職。2017年に東京都府中市から山梨県北杜市の子育て支援住宅へ家族で移住。北杜市を拠点に、月に数日、東京都内の実家に滞在しながら都内での仕事もこなす二拠点居住者。2020年、北杜市内にマイホームが完成。妻の直子さん、小2の兄、年長の妹と4人暮らし。

山梨県北杜市と都内で二拠点居住をする田口孝貴さん

富士山や八ヶ岳、南アルプスを四方にのぞむ自然豊かな場所に建つ田口家。玄関近くに田口孝貴さんの仕事部屋がある。

孝貴さんは、都内の生命保険会社の営業職。仕事柄、もともとオフィスへの出勤が必須なのは週2回のミーティング時のみであったこともあり、家族で山梨県北杜市への移住を決めた。

現在は月1回の出社のタイミングで東京都内に数日間滞在し、都内での商談などもこなしている。孝貴さん以外の家族は完全に山梨に暮らし、孝貴さん自身も約9割は山梨にいるため、二拠点居住というより、移住に近いライフスタイルだ。

孝貴さんと妻の直子さんは共に東京出身。なぜ山梨県へ移り住もうと思ったのだろうか。

「もともと自然の中で暮らしたいという思いが強かったんです。妻はニュージーランドで1年間のワーキングホリデーの経験があり、現地の自然に魅せられていました。私自身も結婚するまでボーイスカウトをしていたので自然の中で過ごすのが好き。しかも東京の蒸し暑い夏が苦手で、もっと気候のよいところに住みたいと思っていました」と孝貴さん。

そんなとき、たまたま電気自動車のレンタルキャンペーンがあり、ドライブを計画。充電せずに都内から2時間程度で行ける場所を考えたとき、ボーイスカウト時代によくキャンプに訪れていた清里(山梨県北杜市)が思い浮かんだという。

顧客は全国各地にいるため、オンラインの打ち合わせも多い

「行ってみると真夏なのに本当に涼しくて。ものすごく気持ちのよい風が吹いていて、住むならこのあたりがいいなあと思ったんですよね」

後日、そんな話を会社ですると、孝貴さんの同僚の実家が、清里の不動産屋さんだと判明した。

「夢は口に出すのが大事だと思いましたね。そうするといろいろな情報が集まってくる。北杜市営子育て支援住宅のこともそうした会話の中で知りました」

北杜市営子育て支援住宅とは、子育てしやすい場所に建設され、子育てにやさしい室内外の仕様・面積・設備を備えた新しいコンセプトの住宅で、ミキハウス子育て総研株式会社による「子育てにやさしい住まいと環境」の認定も受けている。

「いつかは家を建てたかったので、まずは市営住宅に住んで、ゆっくり探すことにしたんです。いろいろな偶然が続いたのは、今思うと奇跡みたいな気がしますね」

子育て支援住宅の存在が、移住のきっかけのひとつに

子育て支援住宅への入居が地域とつながる足がかりに

もちろん、知り合いはいない土地。それが市営の子育て支援住宅に入ったことで、地域とのつながりが一気にできた。

直子さんは、「子育て支援住宅の入居者は、小さな子どもがいるファミリーばかり。やっぱり子ども同士はすぐに仲良くなるから、親も自然に親しくなりました。移住者だけでなく、地元の人もいて、全部で20世帯弱。気の合う友だちもできて、市営住宅を退去した今も仲良くしています」と楽しそうに話す。

直子さんは近隣のゴルフ場でパートをしており、そこでも知り合いが増えたそう。孝貴さんも地元商工会で活動するなどして顔を広げてきた。

「人づきあいでいうと、山梨特有の無尽(むじん)もいいですよね」と孝貴さん。無尽とは、かつて互助扶助の民間金融制度だったもので、現代では定期的に集まり、食事や飲み会をするコミュニティを指す。無尽によっては旅行やスポーツ活動もする。メンバーは、職場や同窓生、趣味つながりなどさまざま。山梨県民なら、一人で複数の無尽に属していることも。孝貴さんも移住後に近隣のゴルフ無尽に入っている。

娘も大好きな手作りレモネード。水は井戸水を使用

「定年後に交流できる仲間がいるって、いいなあと思います。私が入れてもらったゴルフ無尽も平均年齢は60代。みんな元気ですね。山梨県の健康寿命は全国でもトップクラスで高いのですが、個人的には無尽も理由の一つじゃないかと思っています」と孝貴さんはにこやかに話す。

一方で、組や消防団など、都会ではなかった活動もある。
「人口が少ない地域では、住民がやらなければならない活動もあることを理解する必要がありますよね。完璧に手伝うのがムリでも、できることをやればいいと思うし、まずは面倒くさがらず話し合うことが大事なのかなと。人との関わりで心がけているのは、基本的な礼儀を大事にして、オープンに話すこと。それで大体はうまくいくと思います」(孝貴さん)

唯一心配していた冬の寒さも問題はなかったそうだ。

「朝晩はビックリするくらい冷え込みますが、太陽が上がれば日差しは温かくおだやかです。子どもたちの保育園や小学校への送迎も、ウォーキングがてら一緒に歩いていけるくらい。雪は積もるほど降ることは少なく、たとえ降っても除雪車などの対応が早いので安心です」(孝貴さん)

朝晩は冷え込むこともあるが、昼間は穏やかな日差しに包まれる。あたたかいまちと人がある。

孝貴さんは北杜市というエリアの雰囲気も気に入っているという。
「美しい自然がありながら、観光地でもあって、いい感じに垢ぬけている。おしゃれなお店やレストランもあるので休日の楽しみも多く、とてもバランスがよい場所だと感じています」(孝貴さん)

直子さんは、食生活が豊かになったことを喜んでいる。

「近所の農園やスーパーの地元品コーナーで、新鮮な野菜などが気軽に手に入るのがうれしいですね。山梨名産の桃やブドウは子どもたちも大好き。シーズンには、おすそわけしてもらうこともあります。今はネットで何でも買える時代なので、日用品の買い物などはまったく不便は感じません」(直子さん)

自宅の庭ではミニトマトやトウモロコシ、ニンニクなども栽培し、子どもたちもパクパク食べているそう。

北杜市暮らしの感想を改めて聞くと、孝貴さんは「いいことしかないですよ」と力強く答える。

「東京にいるときは、季節の移りかわりに気づくことなんて、ほとんどなかったんですよね。それが今は、道端に小さな花が咲き、庭の木のつぼみがふくらんでくるのを見て、春の訪れを実感する。そんなことにも感動します。

東京では毎日、仕事をいかに効率的に回すかを考えながら、忙しなく動いていましたが、今は暮らしのペースはだいぶのんびり。ストレスも少なく、子どもにもおおらかな気持ちで接することができています」(孝貴さん)

近所の中島農園でよく野菜を購入する。中島さん夫妻は移住者の大先輩。子どもたちを孫のようにかわいがってくれるそうだ

キツネやシカとの遭遇も!自然が当たり前にある子育て環境

子育てのためというより、夫婦の希望で決めた移住だが、北杜市の自然豊かな環境は、子育てにも最適だという。

「自然がそこらじゅうにあるから、子どもと一緒に植物や鳥をよく観察します。空も本当に広いですよね。雪が降れば、そり遊びができる場所もたくさんあるし、夏は川で水遊びやつりも楽しめます。本物の自然の中で遊ばせられるのは贅沢だなと。子どもたちは虫も怖がりません。長男は、カブトムシやクワガタが家のまわりに集まるので大喜び。そうそう、夜間に車で外出すると、キツネやシカなどの動物と出くわすこともしょっちゅうです。親は驚くけれど、子どもにとってはそれが日常。先日キツネを見かけたときも、子どもより私のほうが興奮してしまいました(笑)」(直子さん)

車で20~30分圏内にスキー場やゴルフ場も多く、孝貴さんは将来子どもとゴルフも楽しみたいとのこと。ちなみに小学校は1学年40名弱で2クラス。「少人数教育を推進しているのも山梨県のいいところ」と孝貴さん。

しいて子育ての大変な部分を挙げるなら、「気軽に親に子育てのヘルプを頼めない距離になったこと」と直子さん。一方、孝貴さんは「どこへ行くにも送迎が必要なこと」を挙げた。

「家が密集していないので、友だち同士で気軽に行き来できない距離。放課後は学童保育でお友だちと遊べていますが、休日に遊ぶ場合は親同士の連携が必要。また今後、習い事や塾への送迎も必要になるので、そのあたりの負担はあります。そのかわり、子どもの行動が把握できるので安心感があるという話はよく聞きますね」(孝貴さん)

ストーブのための薪運びもお手伝い

二拠点居住で広がる家族の夢

「ちなみに生活費についていうと、住居費は下がります。都内に比べたら、同じ費用で格段に広い家に住めますね。それ以外の生活費はあまり変わりませんが、夜も早いし、駅ビルなどに寄り道するようなこともなくなったので、無駄使いは減りました。家で地元のワインを飲みながら、地元の野菜を食べる。そんな時間が最高に贅沢です」(孝貴さん)

直子さんは「いつか田んぼでお米を作ってみたい」といい、長男は「ワシかタカを飼いたい」と話しているそうで、孝貴さんも本気で叶えてあげたいと考えているそう。

山梨県にいるからこそ、ふくらんでいく家族の夢。これからも、ここ北杜市ならではの家族の思い出がどんどん増えていきそうだ。

「もう少し朝早い東京行きの特急列車があると、山梨からの通勤の選択肢がぐっと広がるはず」

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