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2023年2月15日

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街まるごと自分のオフィスに!?地方で働く、暮らすに新たな選択肢を提案

山梨県富士吉田市では「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」プロジェクトを展開し、街のあちこちにワークスペースを用意している。実際どう働けるのか?移住や二拠点居住で富士吉田市周辺に暮らしながら、新しい働き方を実践する3人が座談会で本音を語った。
※こちらの特集は、2022年8月時点の取材に基づいて作成しております。

富士吉田市で働くとは?二拠点居住者・移住者の本音トーク

山梨県の富士吉田市は、富士山の北麓に広がる人口5万人弱の街。地方でありながら、オフィスや自宅以外の場所で働く「コワーキング」が盛んだ。

理由は、街のあちこちに誰でも気軽に利用できるワークスペースがあるから。富士吉田市では「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」(※)プロジェクトとして、市内に多くのワークスペースを用意し、新しい働き方を提案している。ワークスペースの形態は、本格的なコワーキングスペースからカフェやホテルの一角まで多様だ。
※富士吉田市まるごとサテライトオフィス

山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組み。市内の様々な場所にワークスペースを用意し、それらのワークスペースを複数の事業者がシェアすることによって、安価で導入リスクの少ないサテライトオフィス勤務地を構えることができる。

富士山駅ビル2Fのコワーキングスペース「ドットワークPlus」

今回は富士吉田市周辺で暮らしながら働く3名で座談会を開催。富士吉田市地域活性化起業人として「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」(以下まるサテ)を推進しているキャップクラウド株式会社の北田萌さん、コワーキングスペース「ドットワークPlus」でコミュニティマネージャーとして働く久野祐さん、そしてまるサテを利用する立場からFCふじざくら山梨の五十嵐雅彦さんに、富士吉田市での働き方や暮らす場所としての魅力を語ってもらった。

「あらくら食堂」のワークスペースはほっと落ち着く和室

プロフィール

●北田 萌さん
キャップクラウド株式会社 社長室 ドットワークプロジェクト事業統括責任者 兼 コミュニティマネージャー
富士吉田市でコワーキングスペース「ドットワーク富士吉田」「ドットワークPlus」を運営するキャップクラウド株式会社へ2021年4月に入社し、富士吉田市へ移住。2022年より富士吉田市地域活性化起業人として、「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」プロジェクトにも参画。

●五十嵐 雅彦さん
FCふじざくら山梨 ゼネラルマネージャー
山梨県南都留郡鳴沢村に本拠地を置く女子サッカークラブ「FCふじざくら山梨」を統括。現在は、富士河口湖町在住。都内に住む子供たちと会うために、月に数回都内へ帰る二拠点居住。

●久野 祐さん
キャップクラウド株式会社 社長室 ドットワークプロジェクトコミュニティマネージャー
元IT会社勤務。2022年5月にキャップクラウド株式会社に入社し、富士吉田市へ移住。同社が運営するコワーキングスペース「ドットワークPlus」と「ドットワーク富士吉田」にてコミュニティマネージャーとしてコミュニティ育成業務に従事。

ざっくばらんな座談会。左から久野さん、北田さん、五十嵐さん

移住や二拠点居住、いまの暮らしと働き方を選んだ理由

北田:3人とも移住や二拠点居住のきっかけは違うんですよね。私自身は岩手県盛岡市出身で、震災をきっかけに地域活性化に興味を持つようになって。「街全体をサテライトオフィス化する」という富士吉田市の斬新な取り組みに興味を持ち、移住を決めました。

現在は富士吉田市の地域活性化起業人としても活動しており、おもに地域の空き家や空きスペースを有効活用してまるサテを推進するために市内を飛び回る日々。なので、私自身もまるサテのワークスペースをアポとアポの合間のリモートワークに便利に使っていて、そこでまた新たなつながりが生まれることもあります。

「この街ではいろいろな挑戦ができそうです」と北田さん

五十嵐:私はFCふじざくら山梨(山梨を本拠地に活動する女子サッカークラブ)のゼネラルマネージャーとして働いています。チームは今年で4年目。私自身はずっと都内に住んでいて、チームを立ち上げてから1年ぐらいは日帰りで山梨へ来ていたのですが、どうしても地域の人たちと深い関係を築きにくくて。2021年より富士河口湖町に移住して、月に数回、都内での仕事や娘たちと会うために都内へ帰る二拠点居住を始め、コワーキングスペースも利用するようになりました。

「二拠点居住で地域とのつながりが深まりました」と五十嵐さん

久野:私はもともと神奈川県でIT企業の会社員だったんですけど、ちょっと仕事に疲れてしまって……。もっとのんびり働ける場所はないかと思っていたところで、この仕事を知って転職しました。いまはコワーキングスペース「ドットワークPlus」と「ドットワーク富士吉田」でコミュニティマネージャーとして、利用者同士をつなげたり、利用者が快適に過ごせるように施設環境を整えたりしています。

「人と人をつなぐとより大きな動きにつながるはず」と久野さん

暮らしてわかった富士吉田市のポテンシャルの高さ

久野:私は福島県出身で、富士吉田市はまったく縁のなかった土地。移住してまだ数カ月ですが、本当にいいところだなと。とくに自然が豊かですよね。富士五湖も富士山もあって、散策に手頃な遊歩道や温泉も多くて。ちゃんとリフレッシュできるから、仕事のスイッチもオンオフがしやすいし、あとは東京に近いのも気に入っています。

北田:そうそう、新宿―富士吉田は高速バスで1時間半だから、日帰りも気軽ですよね。そんな立地もあってUターンも含めて移住者が多く、割と誰でも受け入れてくれる寛容さがあると感じています。私も地域のおじいちゃんやおばあちゃんにすごく仲良くしてもらっていて、野菜や果物のおすそわけもよくもらいます。この夏はナスとキュウリを余るほどもらってしまって、おすすめのレシピを聞き歩いているくらいなんですよ(笑)。

五十嵐:それはいい関係ですね。私も久野さんと同じ福島県出身ですが、二拠点居住を始めてから山梨のことがすごく好きになりました。北田さんをはじめ、街を愛する多くの人に出会ったことで「こんなにいい街だったのか」と改めて気づくことも多くて。この地域でチームを強くして、地域の人たちに応援されたいという思いも強くなりました。自然と行動も広がって、そこから人とのつながりも増えています。

「ドットワークPlus」のパーティションは富士吉田の名産の織物

北田:暮らして驚いたのが、街のポテンシャルの高さです。私は車の免許を持っていないんですが、20分くらいの徒歩圏内で生活に必要なものは一通りそろいます。しかも機織り産業や富士山信仰の御師文化など文化や歴史もある街だから、歩いているといろんな発見があって楽しい。まるサテのワークスペースが徒歩圏内にたくさんあるから、働く場所にも困りません。仕事とプライベートの要素をうまく組み合わせられる、暮らしやすく働きやすい街だと感じています。

おしゃれなカフェ「FUUTO」もまるサテのワークスペース

街全体が二拠点居住や移住者の受け皿として機能

北田:キャップクラウドが運営するコワーキングスペースだけでも2018年以降の利用者が2000人を超えています。コロナ禍でリモートワークが浸透したこともありますが、この規模の街で、ここまでコワーキングが普及しているのは珍しいかなと。

久野:コミュニティマネージャーという立場でいうと、コワーキングスペースは単に働く場所が確保できるだけでなく、人と人がつながる場所としての魅力も大きいと思いますね。

五十嵐:たしかに。先日、FCふじざくら山梨の選手が「ドットワークPlus」でPRイベントをやったとき、隣でイベントをしていたのが高齢者コミュニティ「ソーシャルハウス宝島」で。その場での交流をきっかけに、今度シニアのみなさんにチームのグッズを作ってもらったり、試合入場のエスコートをお願いしたりすることになったんです。コワーキングスペースがあったからこそ、実現したマッチングですよね。

久野:ビジネス寄りのつながりだけでなく、もっと個人的な、たとえば二拠点居住や移住を検討している人と空き家バンクを運営している方をつなげる、といったこともできます。地方の空き家情報はネットにないものも多いんですよね。いい街なので、もっと人が増えるようなお手伝いを積極的にしていきたいです。

「あらくら食堂」では管理栄養士考案の食事メニューも人気

北田:やっぱり人と人のつながりでしか解決しにくい地域課題というのは確実にあって、それを解決できるのがコミュニティ育成の要素を持ったコワーキングスペースだと思うんです。富士吉田市は、まるサテの取り組みによって、それが1カ所ではなく街全体で展開されている。つまり、まるサテが受け皿となり、街全体で二拠点暮らしの人や移住者の人たちを受け入れる体制が整いつつあります。

たとえば、移住を考えていて子どもの学校選びに悩む人がいたら、私自身は答えられませんが、子育て中のワークスペース運営者を紹介することはできます。まるサテでワークスペースに登録している人たちは、単に働く場所だけでなく、暮らしに必要な情報や手助けを惜しみなく提供しようとしてくれる人たちばかり。二拠点暮らしや移住を検討している人も、事前にいろいろな意見やアイデアをもらうことができるので、具体的なビジョンを描きやすくなるはず。まるサテのワークスペースはそういう気軽な相談場所としても活用してほしいですね。今後さらに数を増やしていきたいです。

「FUUTO」はハンドドリップコーヒーや手作りスイーツを提供

北田:2022年7月には富士山駅の駅ビル内に、まるサテの中心地となる新しいコワーキングスペース「ドットワークPlus」ができました。駅ビル内の好立地、かつオープンなスペースなので、これまで関わることがなかった人が交わる機会が増えて、さらにいろいろなことが生まれる可能性があると思っています。どこでも解決できなかった課題を解決できる、これまでになかったアイデアが偶然生まれる、そんな素敵な場所として機能させていきたいです。

五十嵐:ソーシャルハウス宝島と出会ったのも「ドットワークPlus」でしたね。地域のサッカーチームとして、こういう場所での地域のみなさまとの交流は大切にしていきたいです。同時にFCふじざくら山梨の選手たちは、会社員でもあるプレイングワーカーでもあり、「競技でも一流、社会でも一流」を目指しています。今後は選手たちの仕事や学び、キャリア形成の場としてのワークスペースの活用も促進していきたいですね。

久野:富士吉田市には、北田さんのように行政と関わる人もいれば、五十嵐さんのようにスポーツ振興に取り組む人がいて、いろいろな人が集まっていることが地域のポテンシャルだと思っています。まずはこういう場所があることをもっと知ってもらいたいので、SNSの発信やイベントの企画にも力を入れていきます。

まるサテはビジネスマッチングや地域交流の場としても機能

北田:私はいま海外の大学院にオンラインで通いながら働いているのですが、それができるのはリモートワークやフレックスタイム制度のおかげ。リモートワークの普及には、制度・ツール・文化が整わないと難しいのですが、富士吉田市は企業がリモートワークを導入しやすいベースが整っています。リモートワークは、いまの場所にとどまるだけではない多様な働き方、生き方を可能にします。また、女性が子育て中でもキャリアを諦めないことにつながるでしょう。

これから生産年齢人口も減っていく中、地方で生活コストを抑えつつ、最大限のパフォーマンスを発揮するような働き方はますます広まっていくと思います。そのときに「まるサテ」のような仕組みは活きてくるはず。富士吉田市の成功が、いずれは日本各地の自治体に広がり、地方を元気にすることにつながっていくと思いながら日々活動しています。

まるサテ会員になれば市内の提携施設を1日定額で使用できる

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