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2024年8月28日

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山梨県の小菅村へ親子で山村留学!自然の中で「生きる力」を育む暮らし

山梨県小菅村では「小菅村源流親子留学」という名の山村留学を2014年からスタートし、これまでに約90人の親子を受け入れてきた。2024年春から親子で留学を始めた小1の男の子のママ、峰松奈奈さんに小菅村を選んだ理由や暮らしの感想を聞いた。

豊かな里山で暮らす「小菅村源流親子留学」

小菅村は山梨県の東北端に位置する、多摩川源流の小さな山村。人口約600人が暮らす自然豊かな里山だ。ここでは「小菅村源流親子留学」という名の山村留学を2014年からスタートしている。

山村留学とは、小中学生が一定期間住民として暮らし、地元の学校に通いながらさまざまな体験をする取り組みだ。山梨県では小菅村のほかに、早川町や丹波山村でも実施している(※)。小菅村の小菅村源流親子留学は小1~中3の子どもとその親が対象。これまでに29戸、保護者と児童・生徒約90人を受け入れてきた。少人数学級の中で、ゆったりと子育てができるのが特長だ。

※山梨県内の山村留学実施町村の詳細ページ
・小菅村 http://www.vill.kosuge.yamanashi.jp/living/kyoiku/study.html
・早川町 https://www.town.hayakawa.yamanashi.jp/town/grapple/study-abroad.html
・丹波山村 https://www.vill.tabayama.yamanashi.jp/kurashi/sanson/index.html

標高600m前後、面積の約95%を森が占める山梨県小菅村

「自然の中で子育てがしたい」と留学を決意

2024年4月から小菅村源流親子留学を始めた、峰松奈奈さんと小1の息子のたいようくん。それまでは東京都内で暮らしていた。

「便利な都会も好きですが、やっぱりビルに囲まれていて自然は少ない。人が多いから公園遊びもルールが多く、どこか窮屈に感じてしまって……。私も息子も自然が好きなので、もっと田舎でのんびり子育てをしたいと考えたんです」

田舎暮らしを考え始めたのは、たいようくんが年中の頃。本格的な検討は年長から始めた。あちらこちらで「田舎暮らしをしたい」と話していたので自然と情報が集まり、各地の小学校へ見学に行ったそうだ。一般的に山村留学は、子どもだけが行くパターンと親子で行くパターンがあるが、峰松さんは親子で行けることにこだわった。

「どちらにも良さがあると思うのですが、子育ての時間は案外短いので、できるだけ子どもと一緒に過ごしたかったし、そもそも私のほうが田舎に住みたくて(笑)。それで親子で行けるところに絞って探しました」

佐賀県出身、東京都から山梨県小菅村へ移り住んだ峰松奈奈さん

都心からの近さやサポート体制が決め手に

小菅村源流親子留学は、泊まりを伴う体験留学を経て、正式に留学を決める。峰松さんが小菅村に決めた大きな理由の一つが、東京都心から公共交通機関でも2~3時間というアクセスの良さだという。

「実は今も週末だけ美容師として東京で働いているんです。ずっと美容師をしていたので10年以上ご利用いただいているお客さまが多く、何らかの形で続けたかったんですよね。ですから都内へのアクセスの良さは重視しました」

趣味の旅行がしにくくならないかと少し心配していたが、空港までのアクセスも思ったほど悪くなく、これまで同様に楽しめているそうだ。また村の行事に参加したり、友だちが遊びに来たりして、村に残る週末もある。

平日は図書室で働いている峰松さん。本の貸し出し業務や訪れた子どもたちへの読み聞かせなどを行う

各種サポート体制が充実していたことも後押しになった。

「移住後に戸惑わないよう、事前に村の様子や買い物のことなど、いろいろ教えてもらいました。家賃の安い村営住宅や村での仕事を紹介してもらえたのもありがたかったですね。平日は村の図書室で働いています。息子は本が大好きなんです」

村には児童館や習い事がないため、放課後の過ごし方が不安だったというが、ちょうどこの春から週2回、子どもの居場所づくりや学力向上を目的とした公営塾が始まった。塾がない日は峰松さんが働く図書室にきて仕事が終わるのを待ち、一緒に帰宅。図書室は小学校から徒歩3分と、すぐ近くにあるから安心だという。ほかに習い事としてオンライン英会話をしているそうだ。

「ただいま~」と元気よく帰って来た、たいようくん。図書室前にて

便利ではないけれど、退屈しない場所

一度体験に来ていたこともあり、たいようくんも村の暮らしにはスッとなじめた様子。1年生は5人の少人数で、放課後は全校児童が校庭で遊ぶ時間もある。学校の感想を聞くと、「6年生のお兄ちゃんたちとサッカーをするのが好き」と笑顔を見せた。

「まだ数カ月だし、小学校入学のタイミングで留学を始めたので、とくに大きな変化は感じませんが、息子はとにかく楽しそうです。学校のマラソン大会を見に行ったら、村の人たちが沿道で見守りながら応援していて、温かい雰囲気でしたね。1年生は5人。子ども同士の距離が近いので、お友だちとの関わりから学ぶことも多いと思います。

東京では少ない自然を一生懸命探していましたが、ここは自然ばかり。植物に囲まれ、虫もたくさんいて、まるで宝箱のような最高の環境です。子どもは虫が好きですね。私も慣れてきました。

公園こそありませんが、遊べる川もあるし、道の駅にはブランコもあるし、まったく退屈しません。冬は雪が積もったらスキーで遊ぶことを息子も楽しみにしています」

少人数でアットホームなクラス。給食は無償

現状、暮らしに不便は感じていないという。

「私もここへ来る前はネットで調べまくったので、検討する人がメリットだけでなく、デメリットも知りたい気持ちはよくわかります。ただ、本当に今困っていることはなくて。

スーパーはありませんが、私の場合、東京にいるときから農家さんから野菜や卵を取り寄せていて、スーパーをあまり使っていなかったので不便を感じていません。道の駅には地元の人たちがつくる新鮮な野菜が並び、旬の地の物を地産地消できるので贅沢ですね。

今住んでいる村営住宅は、目の前に川が流れていて、とても気持ちがいいんです。息子と平日に庭でBBQを楽しむこともあります。東京では考えられなかったですね。庭にはヨモギなど、食べられる野草がたくさん生えていて、天ぷらやカレーに使っています。おいしくて、息子の友だち家族におすそ分けもしました」

道の駅こすげでお買い物。地元の人との会話も楽しいひととき

親子で培いたい「どこでも生きていける自信」

村の人たちとも、いい関係を築けているそうだ。

「引っ越し直後から、みんなに仲良くしてもらっています。山登りのグループにも入れてもらいました。今後は自分が新しくきた人を誰かとつなげていきたいですね」

小菅村での目標は、「昔ながらの暮らしや知恵を村のおじいちゃんおばあちゃんたちから学び、それを村で実践して子どもたちに伝えていくこと」だという峰松さん。

「小菅村は高齢化が進んでいますが、言い換えれば、生きる知恵の宝庫。助け合いや思いやりを大切にする文化があり、冬の保存食作りにも長けているなど、古き良き日本がここには残っています。まさに日本の無形文化遺産だと感じますね」

「将来の夢はスパイダーマン」とたいようくん

「私自身、自然の中で便利なものになるべく頼らず、無人島でも生き抜けられるくらいの生きる力を身に付けたいと思っていたので、村の方から学ぶことは多いです。ここ小菅村で、私も子どももどこでも生きていける自信をつけ、それをまた次に留学してくる子どもたちに伝えていきたいですね」

山村留学や田舎暮らしを迷っている人に対しては「とりあえず一度行ってみることをおすすめしたい」と背中を押す。

「何か違うと思えば、また別の場所や方法を考えればいい。やる前に諦めて後悔するのが一番もったいない。息子の意思にもよるけれど、私自身は気に入っていて、できるだけ長く住み続けたいです」

道の駅こすげのヤギ牧場。ヤギたちの様子を見るのがお気に入り

自然体験学習やICT教育も充実

全国各地に山村留学ができる場所があるが、小菅村の特徴は学校教育が充実していること。

小菅村教育委員会の藤木さんは、「沢下りやハイキングといった自然体験学習のプログラムを村と一緒に多数企画しており、子どもたちは安全にも配慮したプログラムのもと、のびのび学ぶことができます。学校ではICT活用も進み、オンラインで他校との合同授業をすることもあります。小学校は、学校情報化優良校にも認定されているんですよ。1学年4~5人の少人数なので目が届き、臨機応変な対応ができるのも特長です」と説明する。

「子どもは村の宝」というのが村民の共通認識であるため、教育にはとくに力を入れているそうだ。英検や漢検など各種検定の検定料は村が負担。中学校は村からの補助を活用して修学旅行は海外(オーストラリア)へ行く。

教育以外では、各種サポートの手厚さも魅力だ。住む場所や仕事を紹介してくれるだけでなく、「留学サポーター」が付いて、細かな暮らしのケアから困りごとの相談にものってくれる。小菅村は全国的にも山村留学の開始が早く、ノウハウもあるので心強い。

小菅村教育委員会 教育長 藤木成弘さん。役場の会議室の壁には村産の様々な木の切り株が素敵なオブジェになっている

どんな人が小菅村での山村留学に向いていそうかを聞くと、「静かで何もないこの環境を自由に楽しめる人ではないでしょうか。鳥のさえずりを聞きながら朝散歩をしたり、野に咲く花を見つけたり……」。そう話す藤木さんも朝の散歩が趣味とのこと。

アクセスが良いので週末は大月市や東京都内へ出かけて買い物を楽しむなどメリハリのある暮らしも可能。最近は峰松さんのように二拠点居住をする人も増えている。また、母親と子どもが留学し、父親が週末に遊びにくるようなケースもある。

「ここで育った子どもたちが、自然の美しさに触れ、地球の自然はこんなふうにあるべきで、守っていかなくてはいけないものだという認識を持ってくれたら嬉しいですね。そんな想いで、これからも小菅村源流親子留学を実施していきます」

小学校ではマラソン大会を実施。近所の人が温かく見守る

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