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旅をしながらローカルな交流ができる関係人口創出サービス「TENJIKU(テンジク)」。地域が抱える課題(=ミッション)に取り組むかわりに、無料でその地域に滞在できる仕組みだ。山梨県富士吉田市の「TENJIKU富士吉田」を利用した旅人の中尾怜太郎さんにインタビュー。利用の理由や感想を聞いた。
山梨県富士吉田市で2022年11月にオープンした「TENJIKU(テンジク)富士吉田」。「TENJIKU」とは、地域が抱える課題を “ミッション” として取り組みながら、無料でその地域に滞在できる関係人口を創出する拠点だ。「旅 × シゴト」をコンセプトに、移住や二拠点居住する人を増やしたい地方自治体や企業と、地域活性化に貢献したい“旅人”をマッチングさせる人材プラットフォーム「SAGOJO(サゴジョー)」を運営する株式会社SAGOJOが提供している。
利用者(=旅人)は全国にあるTENJIKUの拠点を訪れ、農作業の手伝いや地域イベント運営の手伝いなど、地域のニーズに合わせたさまざまなミッションに取り組む。対して、TENJIKUの各拠点はそのお礼に無料宿泊を提供する。金銭的な報酬やリターンはないが、滞在を通じて芽生えた地域への共感に応じて、利用者が滞在後に地域を応援できる任意の寄付『サゴチップ』という仕組みを設けている。暮らすような旅をしながら、普通の観光では得られないような人との交流や土地を知る機会を得られるのがサービスの魅力だ。
TENJIKUの拠点は全国16拠点(※2024年3月現在)あり、山梨県内には富士吉田市に2022年11月に「TENJIKU富士吉田」がオープンした。
「TENJIKU富士吉田」の拠点は、富士吉田まるごとサテライトオフィス事業の一環として運営されているコワーキングスペースを備えた滞在施設「.work RESIDENCE(ドットワークレジデンス)」。ここに無料で滞在しながら、富士吉田市の魅力発信やコワーキングスペースのイベント運営の手伝いなど、与えられたミッションをこなす。
今回インタビューした中尾怜太郎さんは5日間滞在し、ミッションとして、コワーキングスペースでIT講座の講師を担当した。
今回話を聞いた中尾怜太郎さんは定時制大学に通いながら、キャリア関連スクールの営業代行やシステム受託開発業を営むYappy代表として都内で活動している。
TENJIKUのサービスに登録したのは2023年初夏。登録のきっかけを聞くと、「旅をしながら暮らすことやワーケーションに憧れがあったんです。TENJIKUはミッションさえこなせば、あとは好きな過ごし方ができる。滞在の自由度が高いことに惹かれました」と話す。
中尾さんの場合、仕事はフルリモートだが、大学への通学が必要なため、夏休みや春休みなど長期休暇を利用してTENJIKUを利用している。すでに過去2回、千葉県で稲刈りを経験。3回目の利用となる今回は初めて「TENJIKU富士吉田」を訪れた。
「距離的に東京から近く、気軽に来られるのがよかったですね。まだ漠然としていますが、将来的にどこかへ移住して農業や狩猟をやりたいという想いがあり、山梨県もその候補地になりそうだと思ったのもあります。農業に興味を持ったのは、祖父が米農家だった影響かもしれません。狩猟は『ゴールデンカムイ』などのマンガで興味を持っていたところに、大学の街づくりの授業で全国の深刻な鳥獣被害を知り、課題解決として自分でもやってみたいと思うようになりました」
中尾さんが山梨県を訪れたのは実はこれが初めて。第一印象を聞くと、「まずは富士山の雄大さに圧倒されました。空気もとても美味しいですね。自然環境が本当に魅力的です」と満面の笑みを見せた。
リモートワークをしながら5日間滞在し、4日目にはミッションであるIT講座を開催。講座に使う資料作成も滞在中に実施した。
「普段、仕事でシステム開発はしていますが、講師として教えるのは初めてなので、学びも多かったです。資料作成に行き詰まったこともあったのですが、拠点の屋上で富士山を見るだけで、いい気分転換になりました。都会の生活は便利ですが、物理的にも精神的にもどこか息苦しさを感じることもあって。富士吉田市のような自然豊かな場所で働くのは、すごくいいリフレッシュになりますね」
拠点と合わせて、コワーキングスペース「ドットワークPlus」を利用して仕事や講座の資料作成をしたことで、人との交流もでき、滞在がより印象深いものになったそうだ。「スタッフの方に講座資料について気軽に相談もできたし、ほかの利用者の方との会話の中で、おすすめされた近所のカフェにも行ってみたんですよ」と振り返る。
コンビニやスーパーもあり、暮らすにも大きな不便はなかったという。滞在中、1日はオフもつくり、レンタサイクルで周辺を巡った。「河口湖から見た富士山が美しすぎて、泣いちゃったんですよ。本当にすばらしい景色ですよね。立ち寄ったふじやま温泉も、とても気持ちがよかったです」
農業や狩猟に興味があるという中尾さん。いつかキャンピングカーを自作してTENJIKUを活用した日本一周にも挑戦してみたいと目を輝かせる。「山梨県には近いうちにまた遊びにきます!」
「TENJIKU富士吉田」には滞在をサポートする2名の「地域案内人」がいる。その一人の土井彰子さんによれば、利用者は20~50代まで幅広く、オープン以降、平均月1名くらいの旅人が訪れているそう。これまでミッションとして依頼したのは、コワーキングスペース「ドットワークPlus」のイベントの運営のお手伝いや近隣の飲食店のお手伝いなど。今回のIT講座は初の試みだが、参加者も多く好評だったとのこと。
「利用者は旅行好きで、普通の旅より一歩現地に踏み込んで、ローカルな交流を楽しみたい人が多いですね。多拠点生活をしたくて自分に合う場所を探している人もいます。
TENJIKUをきっかけに富士吉田市に初めて訪れる方も多いので、ぜひこの街のよさを知ってもらいたいですね。それによって定期的に訪れる場所になったらいいなと思うし、もし移住につながればそれも嬉しいですね」
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